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                                はじめに


 昨年7月、極めて精度の高い偽造米ドル「CB券」(SERIES2001年の高精度偽造米100ドルスーパーXの1種、記番号がCB〜で始まる例が多い)が国内外において大量に出回り、従来の鑑定機を容易に通過するため、金融機関をはじめ外貨両替の窓口においてその対応に苦慮されたことは記憶にあたらしい。ところが、今年6月には、その進化版と言える超高精度偽造券「スーパーX−Dバージョン」(SERIES2003年の高精度偽造米100ドルスーパーX、区別の意味で当研究所が仮に命名)が出現した。スーパーX−Dバージョンは、現在のところCB券のような1種大量の流通ではなく、複数種類の記番号が流通していると見られている。

 偽造券としての特徴は基本的にはCB券(及び一連のスーパーX)と同じであったため、いわゆる記番号等の象徴的な部分のみを刷新した衣替えバージョンと見られていた。しかしながら、これまでCB券では再現されていなかった裏面の赤外線インクによる印刷も今回の「スーパーX−Dバージョン」ではみごとに再現されており、その意味では明らかに「スーパーX」のアップグレイド版と言わざるをえない出来映えとなっている。

 なお、スーパーXの進化(偽造券における改訂)は記番号のみ変わったのではなく、財務長官のサインもSERIES2001年のポール・オニールからSERIES2003年のジョン・スノーにかわっており、この辺のデティールな印刷についても当然のごとく「スーパーX」にはミスがない点を申し添えたい。

 スーパーXはそのほとんどが発見されず、本物として流通していると言われている超高精度の偽造券である。B級以下の一般偽造券に見られるような一目瞭然とした差異がないため、本稿においても見破り方マニュアルとしては、かなり微妙な差異を指摘せざるを得ない。そこで部位の拡大視認にはなるべく鑑定用無収差ルーペの使用をおすすめする次第である。それから、本稿で紹介する真正券の差異については、偽造券のサンプル数が少ないため、同じスーパーX−Dバージョンでも個体差が存在する可能性を申し添えたいと思う。

 さらに、毎々のお断りになるが、目視による鑑定では、当該偽造券とは異なる種類の偽造券が世の中には多数存在しているであろうことをいつも念頭においてに鑑定にあたる必要があり、本稿に掲載されている情報はあくまで一部の偽造券に関する情報である。

 高精度偽造券スーパーXについてはその初期版(SERIES1996バージョン)は99年に国内に初上陸し、現在までに4種(と見られている)ほどの個体が発見されており、偽造団においては修正改良を繰り返し、その品質は逐次向上しているのが実態である。そして今回のスーパーX−Dバージョン(SERIES2003年100$偽造)出現の背景には、CB券等のSERIES2001年バージョンが一般に用心され、いわば流通力が弱まった現象に対し、通用力の強化をはかったと言えよう。

加えて、当研究所としては、来るべき2007年の100ドル紙幣のカラー改訂を目前に、現有設備が有効なうちに駆け込み増産体制に入ったのではないか、との見方を強めている。


平成17年7月9日
偽造通貨対策研究所
事務局




【高精度偽造米ドル「スーパーX−Dバージョン」の鑑定】

1 .全体写真
 1)表面

 偽造券「スーパーX−Dバージョン」(以下、本偽造券という)では、もはや真正券との外観的な差違はほとんど見られない。

  紙厚も真正券とまったく同じ0.012_である。すかしについても真正券と同様紙の凹凸で抄造(漉き込み)されている。真正券では、表面右下にある金種「100」マークは、緑色のメタッリック印刷となっている。

  シフティング・カラー・インク仕様で傾けると黒または紫色に偏向変色して見える。スーパーX−Dバージョンにおいてもこの点は忠実に模倣されている。
(上:真正、下:偽造)
 2)裏面
 裏面についても本偽造券は真正券と同様凹版印刷が施されており、その出来映えは全く遜色のないものと言えよう。
(上:真正、下:偽造)
 偽造券においても本稿のように複写した場合、真正券と同じように微細集合平行同心円線域にモアレが発生している。この点に秀逸さを感ずる。
 3)裏面印刷サイズの差異
 真正券と偽造券の印刷枠左端を合わせ(用紙の裁断位置は無視する)、右端の位置差異を比較すると偽造券は2_程度サイズが大きく印刷されている。

 用紙サイズ及び表面の印刷枠には差異は見られない。真正券の基本用紙サイズは156_(w)×66_(h)で、厚みは0.12_であるが偽造券も同じ仕様となっている。

 多くの方は、高精度偽造券なのに、なぜサイズがちがうのか? との疑問をお持ちになるのではなかろうか。
(右:真正、左:偽造)
(上:真正、下:偽造)
(左:真正、右:偽造)
 右の写真は真正券(上)と
偽造券(下)を時計台部分を中心に合成したものである。偽造券における印刷画像の左右終端が均等、かつ全体的に大小ズレ(偽造券が大)し、偽造券においていわゆる撮影倍率が異なっていることがわかる。

 このことからスーパーX−Dバージョンの裏面の再現はコンピュータによる画像処理技術を用いたことが推量されるのである。真正券の裏面長手方向の中央部分を山おりにし、鑑定定規として使うことで、意外に簡単に見破ることができる。
         
(上:真正、下:偽造)                         (左:真正、右:偽造)
2 .拡大写真(表面)
 1)ハッチング画線 
 表面の上部左右には金種のマーク「100」字が見られるが、下側影部分の微細集合線について、真正券では1本々の間隔が均一でなく手彫りの感じがうかがう知れる。

 むしろ偽造券のほうが整然としており、機械的な感じがする。
 (左:真正、右:偽造)  
 2)文字マークの
                デザイン
  (傾斜角度の差異)
 表面右上「THE UNITED STATES OF AMERICA」の文字のデザインにいくつかの相違点がある。わかりやすいのは「S」字の終筆部がと真正券ではがっている点だ。

 国名をこのほかにもいくつかの文字に微妙な差異が見受けられる。

 詳しくは平成14年11月19日付増頁、「精巧な偽造米ドルス ー パ ー X鑑定マニュアル」参照下さい。
 
(左:真正、右:偽造)
 
 3)マイクロ文字の印刷
 肖像画人物の洋服のえり部分に施されている約200ミクロンの大きさのマイクロ文字「THE UNITED STATES OF AMERICA」に注目する。マイクロ文字は微細なため偽造目的で複製すると、かすれたり、つぶれたりして再現不能となる対策である。

 しかしながら、本偽造券では、むしろ真正券よりクリーンな状態で印刷されている。特に「E」字、「A」字、「R」字などである。
 
(左:真正、右:偽造)
 4)文字マークのデザイン
    とマイクロ文字
 表面左下には金種のマーク「100」字はその中に約400ミクロンの大きさのマイクロ文字「USA100」の文言が連鎖して印刷されている。偽造券においてもマイクロ文字の完成度は真正券と同等な出来映えである。

 しかしながら、マークのデザイン的な差異として「1」字の上下2カ所について真正券では鋭角的(とがった)なデザインであるのに対し、偽造券では面取りしたような丸みがついている。
 
 
(左:真正、右:偽造)
 5)財務商印のデザイン
  (外輪郭線の歯形)
 表面右側の緑色財務商印の外輪郭線部分には小さな歯形が付いてい
る。

 偽造券ではややとがっているように見える。さらに、真正券の歯形の縁には凸版印刷に見られる現象であるマージナルゾーンが認められる。
 
 
(左:真正、右:偽造)
3 .記番号
 (フォント文字デザインの差異)
 紙幣の記号番号について一般の偽造券では不揃いであることが多い。本偽造券では、ややその傾向は見受けられるものの注目すべきはそのかたち、デザインである。

 一般的な偽造券では真正券から写真製版などの手法で写し取った記号番号を原版としてオフセット印刷で再現する例が多いのであるが、当該偽造券では独自のフォント(字のデザイン)を持ち、真正券と同じく凸版印刷が施されているのである。

 個々の記番号の差異については右の写真を参照していただきたい。微妙に異なることがわかるはずである。

 なお、「H」字は本偽造券には対照資料としての真正券に含まれないため他の真正券から転用し、掲載した。
 
 
 
 
(左:真正、右:偽造)

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