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                           はじめに


 2004年7月、スーパーX「CB券(SERIES2001年の高精度偽造米100ドルスーパーXの1種、記番号がCB〜で始まる例が多い)」が出現し、さらに、今年6月には、その進化版と言える超高精度偽造券「スーパーX−Dバージョン」(SERIES2003年の高精度偽造米100ドルスーパーX、区別の意味で当研究所が仮に命名)が出現した。

そして、06年10月、ふたたびSERIES2001のスーパーX「CI券(CB券と同様にSERIES2001年の高精度偽造米100ドルスーパーXの1種、記番号がCI〜で始まる)」が出現した。

 「CI券」は、いわばCB券の改訂版で、それまでの偽造券の特徴は修整され、CB券を見破るための鑑定方法では真正券といわざるをえない状態に進化している。

 それまであったデザイン的な特徴は修整されたものの、偽造券としての特徴は基本的にはCB券(及び一連のスーパーX)と同じである。しかしながら、そのディティ−ルSERIES2001のCI券はむしろ改悪されたできばえとなっている。これまでスーパーXは常に改善され、ますます進化、高精度化してきた偽造券だけに、この改悪現象にはとまどうばかりである。

 ここでいう改悪とは、一種の手抜き仕事であり、細密画線の再現が大雑把になるなどの変化が認められるのである。この変化はあきらかに従来のスーパーXとはその原板が異なると言わざるをえず、たとえば新たな印刷工場や、新手の偽造団び出現も考えられるのである。

 以下に、その改悪?点を明らかにしたい。

なお、本稿で紹介する真正券の差異については、偽造券のサンプル数が少ないため、同じスーパーX−「CI券」でも個体差が存在する可能性を申し添えたいと思う。

 さらに、毎々のお断りになるが、目視による鑑定では、当該偽造券とは異なる種類の偽造券が世の中には多数存在しているであろうことをいつも念頭においてに鑑定にあたる必要があり、本稿に掲載されている情報はあくまで一部の偽造券に関する情報である。

 高精度偽造券スーパーXについてはその初期版(SERIES1996バージョン)は99年に国内に初上陸し、現在までに5種(と見られている)ほどの個体が発見されており、偽造団においては修正改良を繰り返し、その品質は逐次向上しているのが実態である。そして今回のスーパーX−Dバージョン(SERIES2003年100$偽造)出現の背景には、CB券等のSERIES2001年バージョンが一般に用心され、いわば流通力が弱まった現象に対し、通用力の強化をはかったと言えよう。

加えて、当研究所としては、来るべき2007年の100ドル紙幣のカラー改訂を目前に、現有設備が有効なうちに駆け込み増産体制に入ったのではないか、との見方を強めている。


平成18年12月7日
偽造通貨対策研究所
所長 遠藤智彦

【高精度偽造米ドル、スーパーX−「CI券」の鑑定】

1 .全体写真
 1)表面

 偽造券「CI券」では(以下、本偽造券という)では、日常的には真正券との外観的な差違はほとんど見られない。

  紙厚も真正券とまったく同じ0.012_である。すかしについても真正券と同様紙の凹凸で抄造(漉き込み)されている。真正券では、表面右下にある金種「100」マークは、緑色のメタッリック印刷となっている。

  シフティング・カラー・インク仕様で傾けると黒または紫色に偏向変色して見える。スーパーX−Dバージョンにおいてもこの点は忠実に模倣されている。


(上:真正、下:偽造)
 2)裏面
 裏面についても本偽造券は真正券と同様凹版印刷が施されており、その出来映えは全く遜色のないものと言えよう。
 偽造券においても本稿のように複写した場合、真正券と同じように微細集合平行同心円線域にモアレが発生している。この点に秀逸さを感ずる。
(上:真正、下:偽造)
 3)消えた裏面印刷サイズの差異
 従来のCB券に見られた裏面印刷サイズの差異はもう見られない。CB券では真正券と偽造券の印刷枠左端を合わせ(用紙の裁断位置は無視する)、右端の位置差異を比較すると偽造券は2_程度サイズが大きく印刷されていたが、「CI券」ではこの点が直されている。

 用紙サイズ及び表面の印刷枠には差異は見られない。真正券の基本用紙サイズは156_(w)×66_(h)で、厚みは0.12_であるが偽造券も同じ仕様となっている。

 
(右:真正、左:偽造)

(上:真正、下:偽造)

(左:真正、右:偽造)
 
2 .拡大写真(表面)
 
1)ハッチング画線 
 表面の上部左右には金種のマーク「100」字が見られるが、下側影部分のハッチング、すなわち微細集合線について、真正券では1本々の間隔が均一でなく手彫りの感じがうかがい知れる。   
偽造券ではこの部分は文字の輪郭線から放射線状に広がる波紋画線となっており、偽造というよりは独自のデザインで作られている。 (左:真正、右:偽造) 
 2)文字マークの
               
デザイン
  (傾斜角度の差異)
 表面右上「THE UNITED STATES OF AMERICA」の文字のデザインにいくつかの相違点がある。わかりやすいのは「S」字の終筆部がと真正券ではがっている点だ。

 真正券ではヘアラインのハッチングが偽造券ではメッシュハッチングとなっており、しかも其の目は相当に粗い。このほかにもいくつかの文字に微妙な差異が見受けられる。

 詳しくは平成14年11月19日付増頁、「精巧な偽造米ドルス ー パ ー X鑑定マニュアル」参照下さい。
 
(左:真正、右:偽造)
 
 3)マイクロ文字の印刷
 肖像画人物の洋服のえり部分に施されている約200ミクロンの大きさのマイクロ文字「THE UNITED STATES OF AMERICA」に注目する。マイクロ文字は微細なため偽造目的で複製すると、かすれたり、つぶれたりして再現不能となる対策である。

 しかしながら、本偽造券では、むしろ真正券よりクリーンな状態で印刷されている。特に「E」字、「A」字、「R」字などである。
 
(左:真正、右:偽造)
 4)文字マークのデザイン
    とマイクロ文字
 表面左下には金種のマーク「100」字はその中に約400ミクロンの大きさのマイクロ文字「USA100」の文言が連鎖して印刷されている。偽造券においてもマイクロ文字の完成度は真正券と同等な出来映えである。

 しかしながら、マークのデザイン的な差異として「1」字の上下2カ所について鋭角的(とがった)なデザインである。

 従来のスーパーXではこの箇所には面取りしたような丸みがついていた。
 
 
(左:真正、右:偽造)
5)異なるハッチングの角度
  (連銀マーク)
 連銀ホールマーク部分のハッチングについては、真正券においては白頭鷲及びその台座部分のみとされていたが、本偽造券では外輪郭線部分も含めすべてにハッチングが施されている。
  

(左:真正、右:偽造)

 
※真正券に、外輪郭線部分も含めすべてにハッチングが施された仕様があるか、いなか目下調査中である。念のため。
 6)財務商印のデザイン
  (外輪郭線の歯形)
 表面右側の緑色財務商印の外輪郭線部分には小さな歯形が付いてい
る。

 偽造券ではややとがっているように見える。さらに、真正券の歯形の縁には凸版印刷に見られる現象であるマージナルゾーンが認められる。
 
 
(左:真正、右:偽造)
3 .記番号
 (フォント文字デザインの差異)
 紙幣の記号番号について一般の偽造券では不揃いであることが多い。本偽造券では、ややその傾向は見受けられるものの注目すべきはそのかたち、デザインである。

 CB券では「9」の終筆部はラッパ状に広がっていたが、「CI券」では修整されている。

 個々の記番号の差異については右の写真を参照していただきたい。微妙に異なることがわかるはずである。

 縦画線が内側に湾曲していたCB券の特徴は「CI券」においてはすでに修整されている。
    
 
 
真正券では「C」字の始終筆部はやや内側に曲がっている。しかしながら、偽造券では垂直方向にまっすぐ伸びるデザインになっている。   
(左:真正、右:偽造)

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