偽造人民元の鑑定

 中国人民元紙幣については、世界的に見ても、米ドル紙幣についで偽造券の含有率が多いと観測する向きもあり、特に日本国内で円との両替を行う場合は、注意を要する。本稿では偽造人民元のなかでも高精度と言える例を紹介したが、当該偽造券以外の仕様も、散見されている。

 偽造通貨対策研究所ではこの他にも、旧券や異なる金種の偽造券についても見破り方マニュアルを作成する予定であり、当研究所のWEBサイトである偽造通貨鑑定マニュアルNETバージョンに随時サイトアップする予定である。人民元対応を実施する両替商の皆様におかれては当サイトを適宜なタイミングで参照されることをおすすめしたい。

 毎々のおことわりながら、偽造券には複数の種類があり、本稿に紹介した特徴を有しない偽造券が世の中には存在するという点を念頭におき、本マニュアルを参考にしていただきたい旨を申し添える次第である。
                                                            (平成17年3月25日)
表面全体
)真正券
 表面の特徴としては中央の「100」の金種マークの右に顕在模様としての肖像画(人物は毛沢東)が、さらに左側には潜在模様といえる肖像画のすかしの)が確認できる。
 真正券の印刷版式は凹版印刷である。

)偽造券
 目視により外観を見た場合、容易には鑑定できない出来映えと言える。偽造券のすかしはいわゆる印刷すかしであるため、同部分はややインクが塗布されていることが、微妙ながら視認できる。
 当該偽造券の印刷版式はいわゆるオフセット印刷となっている。
 
裏面全体
)真正券
 裏面は全体に微細画線による地紋模様が見られる。
 混抄されたメタルセキュリティースレッドはやや盛り上がっているように見受けられる。
)偽造券
 表裏とも網点状の印刷(オフセット印刷)により再現されているが、真正券に見られる着色混抄繊維は印刷により再現されている。
 
3.微細印刷について
微細印刷の視認には無収差ルーペの使用をおすすめします。
)地紋模様と文字
 真正券では地紋模様はしっかりとした細密画線が描かれており、「国」字がその上に凹版印刷されている。
 「国」字は凹版印刷のため紙の平面に対し、インクが盛り上がって印刷付着しているのがわかる。
真正券
 偽造券では地紋模様は網点印刷、すなわち真正券が「線」であるのに対し、偽造券は「点」の集合で線を表していると言えよう。印刷版式の差異が出来映えの差異として現れた例である。
 偽造券では平版印刷であるため、「国」字は凹版印刷とは異なり、まさに平面的な印刷となっている。インクの盛り上がりは見受けられない。
偽造券
微細線、インクの盛り上がりは再現できない
)凹版印刷による細密画線
 紙幣を鑑定する際、よく肖像画の人物の目(瞳)を見ろ、といわれる。識者は、「真正券は活き活きとし、迫力があり、対して偽造券ではメリハリがなく死んだ目のようだ」などと、表現する場合がある。
 日本円や米ドル紙幣でも肖像画に描かれた人物の目は人民元と同様波紋状の微細画線で表されている。我々が真正券に力強さや迫力を感じるのは、実は凹版印刷ならではの、しかっりとした線の集合たる印刷にあったのである。
真正券
   画像は「線」の集合である 
 偽造券ではオフセット等の平版印刷によって再現しているため、拡大してみると真正券の仕様とはまったく異なった印刷となっている。まぶたや瞳の画線は点の集合であり、いわゆる真正券のもつ迫力は感じられない。

 印象としてはまさに「死んだ目のよう」だ。
偽造券
   画像は「点」の集合である
)微細並行集合線
 紙幣の偽造対策としてよく用いられる微細集合線は人民元にも施されている。
 右図の部分では色合いがグラデーション的に変化しつつ、白抜きの幾何学模様まで施し、高度な偽造対策がとられている。
真正券
 微細集合線はオフセット印刷による偽造券では、再現できない。拡大視認が有効な鑑定となる。
偽造券
4.識別マークに見られる深凹版印刷について
 紙幣の右下には、いわゆる識別マークが、深い凹版印刷で印刷されている。真正券では紙の表面に対し、相当にインクが盛り上がって印刷されている。このため指の触感で金種が判断できる。本来識別マークは目の不自由な人のために考えられた印刷であるが、偽造対策としても有効で一石二鳥といった感のある対策である。鑑定方法としては斜光線による拡大鑑定をおすすめしたい。

     人民元     米ドル 
    (無収差ルーペRD02型と斜光線UVD−2型の併用例)
真正券
    インクが盛り上がっている
 偽造券では真正券のようなインクの盛り上がりは見られない。平版印刷の特徴であるフラットな感じの出来映えである。
ただし、偽造米ドルなどでは凹版印刷の特徴を擬似的に再現する意味で、いわゆるエンボス痕を施し、触感を誤認させようとする例もあり、今後、人民元にもそのような新手の偽造券が現れる可能性があることを指摘したい。

  
     真正券(米ドル)        エンボス痕のある偽造券
偽造券
 インクの盛り上がりは見られない
5.シフティング・カラード・インクについて
  (オプティカル・バリアブル・インク)
 表面の左下には紙幣を傾けると変色して見える特殊なインクによる印刷が施されている。
真正券
真正面からみた色あい
=光沢のある緑色
斜めからみた色合い
濃い色に変色
  偽造券では真正券のような色の変化は見受けられない。 偽造券
真正面からみた色あい
=光沢のある緑色
斜めからみた色合い
変化なし
6.紙幣記番号に見られる磁気反応
1) 真正券
 真正券の記番号の印刷には微弱な磁性インクが使用されている。画像的な差異はないが、磁気センサーに反応するため、鑑定装置などはこのポイントを鑑定要素に採り入れている例が多い。当該人民元はこの紙幣記番号以外はすべて非磁性インクで印刷されている。
真正券
         磁性インク
2) 偽造券
 当該偽造券では磁性インクは使用されず、磁気センサーには反応がない。
偽造券
          非磁性インク
※磁気センサーについて
 米ドル紙幣など多くの通貨では磁性インクにより印刷されている。磁気の有無は、右図のような軽便な磁気センサーで鑑定が可能である。
   磁気センサーST008型

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