はじめに

 1999年以降、その存在が確認され、スーパーX(SuperX)あるいはスーパースーパーノート(Super Super Note)と称され、伝えられている米100ドル偽造券(96年改訂の新デザインの100ドル)は、極めて精巧な出来映えで、凹版及び凸版印刷により磁性インクを使用、着色繊維混抄用紙を用い、マイクロ文字、すかし、セキュリティースレッドなどの偽造対策も精巧に再現されている。また、真正券の最大の特徴であり、偽造による再現は不可能と見られていたシフティングカラーインク(表面右下の光沢緑色金種マーク:見る角度により変色する)についても、角度による緑色から黒色への変色の度合いまで、みごとに再現されている。真正券はスイスのジオリ社製単色凹版輪転印刷機により、印刷され、記号番号はミーレゴス社製の番号印章加刷機により印刷されている。製版はもちろん彫刻凹版である。すかし及びセキュリティースレッドが施された用紙はマサチューセッツ州クレーン社により抄造されている。偽造券であるスーパーXが何処でどのように製造されているかは、定かではないが素材、設備、技術のいずれも真正券と同等のものが用いられているものと見られる。


 スーパーXは日常的な目視による鑑定は極めて困難な上に、真正券が有する磁気信号などのデータまでも正確に模倣、再現しており、従来タイプのアルゴリズムを持つ紙幣鑑定機についても容易に通過するため、鑑定実務においては何らかの対策が必要である。
 
 偽造といえども、精度、品質を維持するためには素材の調達や印刷機などの設備、さらには原版政策のための技術者の確保、要請など様々な条件が必要である。もちろん資材や設備を調達するための多額の資金も必要となるであろう。そして何より、作業に従事する人が「偽造は悪事である」ことを知りつつも、それを乗り越え、実行する意志と、さらにその事実が外部へ漏洩することなく、製造が継続されていることは、大いなる脅威である。
 
 本書ではスーパーXを目視により鑑定するための鑑定マニュアルという位置ずけで編集されている。真正券と異なっている特徴点は、その部位を拡大抽出し、場合によっては紫外線などの装置を使用し、日常的には発見しにくい偽造券のいわばウイークポイントをあばき出している。本書が外貨両替などで米ドル紙幣の鑑定を必要とする読者への一助になればよかれと考える次第である。
 
 ただし、毎々のお断りながら、世の中には本書に掲載されていない、異種偽造券も多数流通していることを留意の上でご覧いただきたいことを申し添えたい。

                                                   平成14年 3月19日

                                                   偽造通貨対策研究所
 
                                        
 
 
                                    
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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